式辞

 春の風が、学校に花の匂いや鳥のさえずりを運んでくれる今日の良き日、令和三年度、島根県立平田高等学校入学式を執り行うことができますことは、私共のこの上ない喜びであり、誠に嬉しく存じます。本校を代表し、深く感謝申し上げます。
 新型コロナウイルス感染症拡大防止対策として、この様な形で入学式を執り行わなければならないことにつきまして、大変申し訳なく思っております。どうかご理解のほどよろしくお願いいたします。

 先ほど入学を許可しました、第七十五期生、百四十四名の新入生の皆さん、ご入学、誠におめでとうございます。本校の在校生、教職員一同、皆さんを心から歓迎いたします。
 また、保護者の皆様、お子様のご入学、誠におめでとうございます。これまでお子様を育ててこられました皆様のご尽力に、衷心より敬意を表すとともに、私共教職員に課せられた責任の重さに、身の引き締まる思いでございます。お子様に寄せる思いを真摯に受け止め、私共教職員は、お子様の大いなる成長を目指して教育活動に取り組んでまいります。どうか、本校の教育活動にご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。


 さて、新入生の皆さん、皆さんが入学しました平田高校は、大正五年に平田農学校として設立以来、幾度の変遷を経て、今年で百五年目を迎える、歴史と伝統のある高校です。卒業生は一万七千名を超えており、平田地域はもとより、島根県内また全国各地で、政治、経済、文化などあらゆる分野において、たくさんの方々が活躍されています。
 一昨年度からは、文部科学省の事業である「地域との協働による高等学校教育改革推進事業」の指定校として、平田商工会議所や島根県立大学などの地域の様々な機関と連携しながら、地域の活性化と地域人材の育成につながる、体験的・探究的な質の高い学習に取り組んでいます。
 部活動も盛んで、生徒のほとんどが何らかの部に加入しています。全国大会や中国大会に出場する部も多く、また、地域の行事などにもボランティアとして参加しています。
 本校においては、ステージに向かって右上に掲げてある「自律・協同・創造」の校訓のもと、「主体的な姿勢と協調の精神をもって、常に新しい時代を切り開く人格の形成に努めさせる」を教育方針とし、生徒、教職員、地域が一丸となってあらゆる活動に取り組んでいます。
 本日から本校で過ごすこの三年間は、今後の皆さんの人生において大変大きな意味をもつ時期であることは言うまでもありません。そこで、今日は、皆さんの高校生活が有意義なものになりますように、心に留めておいてほしいことを一つだけお話したいと思います。

 「致知」という雑誌に掲載されていた京セラ名誉会長の稲盛和夫氏の言葉を紹介します。稲盛氏によれば、すべては自分の「思い」がつくり出しているのだそうです。皆さんは勉強ができる、部活動で活躍するなどということが大事であると思っているかもしれません。もちろん、それもとても大事なことですが、心にどのようなことを「思う」かということはそれよりもはるかに大事なことです。しかし、そのことに多くの人は気がついていません。実は、この「思う」ということが、人間のすべての行動の源、基本になっているのです。
 そのことは、二つの側面から捉えることができます。まず、我々が毎日の生活を送る中で抱く「思い」の蓄積されたものが、我々の人間性、人柄、人格をつくり出しているのです。「自分だけよければ」という「思い」をずっと巡らせている人は、その「思い」と同じ人間性、人柄、人格になっていきます。逆に、思いやりに満ちた優しい「思い」を抱いている人は、知らず知らずのうちに、思いやりに溢れた人間性、人柄、人格になっていきます。
 さらに「思い」はもう一つ、大きな役割を持っています。それは「思い」の蓄積されたものが、その人に合ったような境遇をつくっていく、ということです。あるいは「思い」の蓄積されたものが、その人の運命をつくっていると言っても過言ではありません。イギリスの哲学者ジェームズ・アレンは「人間は思いの主人であり、人格の制作者であり、環境と運命の設計者である」と言っています。その人の周囲に何が起こっており、現在どんな境遇にあるのか。それはまさに、今までその人がずっと心に抱いてきた「思い」が集積されたものであると言えるのではないでしょうか。
 さて、その「思い」が芽生えてくる人間の心を庭に例えて、先ほどのジェームズ・アレンは次のように表現しています。
『人間の心は、庭のようなものです。それは知的に耕されることもあれば、野放しにされることもありますが、そこからはどちらの場合にも必ず何かが生えてきます。
 もしあなたが自分の庭に、美しい草花の種を蒔かなかったなら、そこにはやがて雑草の種が無数に舞い落ち、雑草のみが生い茂ることになります。すぐれた園芸家は、庭を耕し、雑草を取り除き、美しい草花の種を蒔き、それを育み続けます。』
 つまり、人間の心というものは、自分で手入れしなければならないのです。
 
「自律・協同・創造」を校訓とする本校は、皆さんが将来に向けて学習や部活動に打ち込み、自分の心を磨き、手入れするにふさわしい場所であると信じています。
 新入生の皆さん、本校には皆さんが志を持って学ぼうとすれば、その気持ちに充分応えられる機会が準備され、また皆さんを全力でサポートしてくれる先生方が待っています。どうか、この平田高校という場を十分に活かし、充実した日々を過ごしてください。

 新入生の百四十四名の皆さんの成長と、大いなる志の実現のために、教職員が一丸となって尽力することをここにお誓い申し上げ、式辞といたします。

  
令和三年四月九日                                      
     島根県立平田高等学校   校長 小 林  努

●クラス発表

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●入学式

入学式

●新入生代表挨拶

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