ばたでんが奏でるレール音も心地よい響きに感じられる時期となり、周囲の花々も咲きほころびはじめました。たしかな春の息吹を感じる今日のよき日に、ご来賓の皆様のご臨席を賜り、ここに第77回卒業証書授与式を挙行できますことは、大きな喜びであり、まことに感謝にたえないところであります。心から厚く御礼申し上げます。

保護者の皆様におかれましては、今日のお子様の成長された姿に感慨もひとしおのことと存じます。ご卒業をお慶び申し上げますとともに、本校の教育活動に対し、ご理解と温かいご支援とご協力をいただき、誠にありがとうございました。本日は一回り、二回りも大きくなったお子様の姿を見つめてあげていただきたいと思います。

さて、卒業生の皆さん あらためて「卒業おめでとう」 思い返せば、ちょうど1年ほど前、皆さんに「花を咲かせよう」の話をしたことを思い出しました。自らを種に例え、ぜひともきれいな花を咲かせて欲しい、すなわち種の中に眠る自らの可能性を引き出して欲しい。そのためには水、日光、肥料など適切な世話が大切、具体的には努力はもちろん計画性や勉強量などが重要と伝えました。今日は水や日光などにあたる、その一つを改めて紹介します。それは「失敗すること」です。

皆さんは麦踏みを知っていますか? 秋に播く麦類は芽が出てきたところで、上からしっかり踏みつける作業が行われます。芽はペシャンコになりますが、数日後にはまた上を向いて伸びてきます。踏みつけることで、根がしっかりと張り、寒さに強くなり、収穫量が増えるとされています。皆さんが何かを成し遂げよう、あるいは新たに一歩踏み出そうとするとき、うまくいかないあるいは失敗してしまうこともあると思いますが、これこそが麦踏みです。一度や二度の失敗で諦めず、踏まれても踏まれても再び上を向いて前進する力強さを持ち続けてください。失敗を経験することで人は強くなります。人生において失敗は学びのチャンスです。皆さんの目の前にいる失敗を数多く経験したこの私が伝えていますので間違いはありません。これからの人生において自らの可能性を花咲かせるために、くじけず前進する力強さを今後も育ててください。「失敗を恐れ、踏み出そうとしなかったことが、人生最大の失敗だった」と後に悔やむこととならないためにも。

さて、最後に今年も私から卒業生の皆さんに伝えておきたいことがあります。平田の鰐淵にはかつて良質な石こうが採れる日本有数の鉱山があり、一時期は全国の4割近くの生産量を誇りました。石こうはセメントの原料としてもつかわれており、セメントにはわずか3%の配合で石こうを入れるそうです。この3%がなければ、セメントは白色にならないし、固まりません。石こうは今は輸入したものを使っていますが、50年近く前までは平田の石こうが使われていたとの事。そのセメントが日本各地のトンネル、ビルやダムなどの建設に使われ、高度経済成長期の日本の発展を支えたのです。3%、たかが3%、されど3%。みなさん一人一人が世の中というフィールドにおいて、「これまでに養った力」や「自らの持ち味」を出して、足場を固めて、かつての平田の石こうのように日本や地域の発展を支えることに必要不可欠な存在となって活躍して欲しいと願っています。

さあ、皆さん、いよいよ新たなる旅立ちです。今まで育ててくださったご家族に感謝し、指導くださった大人たちの教えもときには思いだし、そしてこれからの新たな出会いを大切に自らの人生を歩んでください。 

 卒業生の皆さん貴重な三年間をこの平田の、この学校で学ぶことを選んでくれて、本当にありがとう。

 

 

令和8年3月1日

島根県立平田高等学校 校長 野津孝明