二十四節気の清明の頃、空は澄み、ツバメが飛来し、爽やかな風が吹き出しました。愛宕山公園に咲きそろう花々にもすがすがしさを感じられる時期となりました。

本日はご来賓の方々のご臨席を賜り、入学式を挙行できますこと、私たちにとって大きな喜びであります。ご臨席いただきましたこと、まずもってお礼申し上げます。ありがとうございました。 

 保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。高校での三年間は、先の見えないこれからの世の中を生き抜く力を身につける重要な時期ですが、同時に心の葛藤も多い時期でもあります。互いに安心感を保てる親子関係づくりに努めていただきたく思います。私たち教職員は、お子様自身が自らの課題を自覚し、将来を切り開いていけるよう、支援してまいります。保護者の皆様におかれましても、本校の教育方針を十分にご理解いただき、ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

 さて、先ほど入学を許可しました新入生の皆さん、あらためて入学おめでとう。皆さんも今日から平田高校での生活が始まります。本校は来年度、創立110周年を迎える伝統ある学校です。平田高校の一員であることに誇りをもち、充実した高校生活を送ってもらいたいと思います。

 とはいえ、地域を観察してみると過疎化や少子高齢化に伴う様々な課題が山積みです。この平田高校も常に地域の一員として前進し続ける必要があります。自分自身で決断し、本校への入学を決断してくれた新入生の皆さん。本校の地域協働学習の時間を通じて、在校生、教職員とも力を合わせて、「自分の『やりたい』が、同時にまわりを『笑顔』にできる」学びへとつながることを期待します。

 そのためには「ふみこみ すなわち=挑戦」が必要です。高校生活においては様々なことに挑戦してもらいたいと思いますが、挑戦すれば成功もあれば、必ず「失敗」もあります。「失敗」体験をネガティブにとらえすぎず、しっかり振り返る。なぜ失敗したのか、何が足りなかったのかなどの分析を行うことに力を入れ、新たなワンランク上の挑戦に踏み出せる力強さを獲得してほしいと思います。私自身は「失敗」をおそれ、なにも「挑戦」しないことが後に人生における最大の「失敗」となってしまうと考えます。新入生の皆さんだけでなく、在校生、また教職員も決して失敗を恐れることなく、失敗さえも前向きにとらえ、リスタートできるチームであってほしいと思います。

 さて、最後に新入生の皆さんに一つお話ししておきたいことがあります。二〇世紀の半ばに若い人たちにブームとなったフランスの哲学者にサルトルという人物がいました。彼の考えの一つを紹介します。今、私が皆さんに「あなたたちは何のために生まれてきたのか」と聞けば、どのような答えが返ってくるでしょうか? 

 私の前にマイクがありますが、これは「音声を拾い、拡大して届けるため」に生まれてきたモノです。皆さんから見て、左側には時計がありますが、これは「私たちに刻を知らせるため」に生まれてきたモノです。ここでいいたいことは「モノは生まれる、言い換えれば作られる前に目的、『何々のために』がすでにある」と言うことです。

 皆さんはモノではないですね、そうヒトです。サルトルは「ヒトは目的を持って生まれてきていない。ヒトは生きる目的を自ら探し、自らを作り上げていかねばならない」と言っています。

 さあ、皆さんこの平田高校での3年間で様々な体験をし、多くの人たちと出会い、そして時にはぶつかり合い、たたえ合いながら、また成功や失敗を繰り返しながら「自らの生きる目的」を見つけてください。そして自らに秘めている可能性という名の花を咲かせるための3年間の旅に出発しましょう。

 新入生の卒業までの3年間が有意義な高校生活となることを祈り、式辞を終えます。

 

令和7年4月9日

島根県立平田高等学校  校長 野 津 孝 明

 

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