令和6年度卒業式 式辞
2025年03月05日
一畑電車のレール音も軽やかに感じられる時期となりました。周囲の花々も咲きほころび 確かな春の息吹が感じられる今日のよき日を迎えることができました。
本日は来賓の皆様のご臨席を賜り、卒業式を挙行できますこと、卒業生はもとより、私たち教職員及び在校生にとって大きな喜びであります。まずはお礼申し上げます。ありがとうございます。
保護者の皆様におかれましては、新型コロナウィルスの状況を含め、様々心配されながらの3年間、今日のお子様の成長された姿に感慨もひとしおのことと存じます。ご卒業をお慶び申し上げますとともに、これまでのご理解とご協力に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。本日は一回りも二回りも大きくなったお子様の姿をしっかりと見つめてあげていただきたいと思います。
さて、卒業生の皆さん あらためて「卒業おめでとう」 思い返せば、皆さんは本校入学前から2年次半ばまでコロナ禍での学業や部活動を強いられ、学校行事や地域の方々との交流も制限された中での生活が続き、いわゆる「先の見えないなかで」、「当たり前のこと」が体験できない日々を過ごしました。
そのような、あなた方へのエールとして、1学期始業式でローランドさんの「先が見えた人生の方がよっぽど怖い。先が見えないからこそ考え、努力し、前に進める。もし先が見えたら、何も考えずに流されていくだけでしょう。」と伝えました。また私が出会った生徒の「失敗を恐れ、踏み出そうとしないことが、人生最大の失敗になる」という言葉を伝えました。少しは記憶にありますか?
振り返ってみて、どうでしたか? 制限が様々あった中で精一杯の工夫と本当に必要か必要でないかの取捨選択など、これまで体験できなかった「当たり前でないこと」に多く関われたと思いませんか? 確かに先の見えない苦しみはあったと思いますが、その中で何ができるかを真剣に考えたはずです。10年後も予測できない現代の社会において、あなた方は苦しんだからこそ、獲得した力を発揮し、今後も力強く踏み出してくれると信じています。
さて、最後に私から皆さんにひとつ伝えておきたいことがあります。平田の鰐淵にはかつて良質な石こうが採れる日本有数の鉱山があり、一時期は日本の石こう生産量の4割近くを占めていました。石こうはセメントの原料としてもつかわれ、そのときにわずか3%の配合で石膏を入れるそうです。ですが、この3%がなければ、セメントは白くならず、固まらないそうです。現在は石こうもそのほとんどが輸入に頼っていますが、50年近く前までは平田の石こうが使われていたとの事。そのセメントが日本各地のトンネル、ビルやダムなどの建設に使われ、高度経済成長期の日本の基盤となり発展を支えたのです。
3%、たかが3%、されど3%。みなさん一人一人が世の中というフィールドにおいて、「これまでに養った力」や「自らの持ち味」を出し、自身の足場を固めて、かつての平田の石こうのごとく日本や地域の発展を支えるために不可欠な存在となって活躍して欲しいと願っています。
さあ、皆さん、いよいよ新たなる旅たちです。今まで育ててくださったご家族に感謝し、指導くださった大人たちの教えを胸に、そしてこれからの新たな出会いを大切に、自らの人生を歩んでください。
卒業生の皆さん 貴重な三年間を この土地の この学校で 学ぶことを選んでくれて、本当にありがとう。
令和7年3月1日
島根県立平田高等学校 校長 野津孝明