入学式 新入生

陽春の候

 野山の色も明るさを取り戻し、風も暖かく感じだす。いよいよ春本番。今日のこのよき日に、来賓の皆様のご臨席を賜り、入学式を挙行できますこと、入学生はもとより、私たち教職員及び在校生にとって大きな喜びであります。ご臨席いただきましたこと、まずもってお礼申し上げます。

 

 保護者の皆様、本日はお子様のご入学、誠におめでとうございます。高校での三年間は、人生の方向性はもちろん、これからの世の中を生き抜く上での社会人力を身につける大切な時期ですが、同時に心の葛藤も多く悩み・苦しみの多い時期でもあります。互いに安心できる親子関係づくりに努めていただきたく思います。私たち教職員は、お子様自身が自らの課題を自覚し、生きる道を切り開いていけるよう、支援してまいります。保護者の皆様におかれましても、本校の教育方針を十分にご理解いただき、ご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

 

 さて、只今入学を許可しました160名の新入生の皆さん、入学おめでとう。本校は、大正五年に平田農学校として設立以来、百年を超える長い歴史と伝統を有し、卒業生は一万八千名を超え、たくさんの先輩が、県内外の様々な分野で活躍されています。皆さんも今日から平田高校での生活が始まります。平田高校の一員であることに誇りをもち、充実した高校生活を送ってもらいたいと思います。

 

 とはいえ、地域を観察してみると過疎化や少子高齢化に伴う様々な課題が山積みです。この平田高校も常に地域の一員として前進し続ける必要があります。自分自身の主体的な決断によって、本校の門をたたいてくれた新入生の皆さん。在校生、教職員とも力を合わせて、「夢を持ち、果敢に挑戦を続け、そして達成の際には笑顔あふれる」チーム平田高校へと進化していけるように皆で努力していきましょう。

 

 そのためにも「ふみこみ すなわち=挑戦」が必要です。高校生活の中では様々なことに挑戦してもらいたいと思います。ですが挑戦すれば成功もあれば、必ず「失敗」もあります。「失敗」体験をネガティブにとらえすぎず、しっかり振り返る(なぜ失敗したのか、何が足りなかったのかなど)、分析を行うことに力を入れ、新たなワンランク上の挑戦に踏み出せる力強さを獲得してほしいと思います。私自身は「失敗」をおそれ、「挑戦」しないことが人生における最大の「失敗」だと考えます。新入生の皆さんだけでなく、在校生、また教職員も決して失敗を恐れることなく、失敗さえも前向きにとらえ、リスタートできるチームであってほしいと思います。

 

さて、最後に新入生の皆さんに一つお話ししておきたいことがあります。二〇世紀の半ばに若い人たちにブームとなったフランスの哲学者にサルトルという人物がいました。彼の考えの一つを紹介させていただきます。今、私が皆さんに「あなたたちは何のために生まれてきたのか」と問えば、どのような答えが返ってくるでしょうか? その答えを待った後に私は「どんな方法で叶えますか」「世の中のためにはどのように貢献できますか」「あなたのやりたいは周りを笑顔にできますか」と私は問い返すと思います。

 私の前にマイクがありますが、これは「音声を拾い、拡大して届けるため」に生まれてきたモノです。皆さんから見て、左側には時計がありますが、これは「私たちにときを知らせるため」に生まれてきたモノです。ここでいいたいことは「モノは生まれる、言い換えれば作られる前に目的がすでにあるのです。」

 皆さんはモノではなく、ヒトです。サルトルは「ヒトは目的を持って生まれてきていない。ヒトは生きる目的を自ら探し、自らを作り上げていかねばならない」と言っています。

 さあ、皆さんこの平田高校での3年間で様々な体験をし、多くの人たちと出会い、そして時にはぶつかり合い・たたえ合いながら、また成功や失敗を繰り返しながら「自らの生きる目的」探しのためにチャレンジしてみませんか。

 新入生のこれからの3年間が有意義な高校生活となることを祈念して、式辞を終えたいと思います。

 

 

令和6年 4月9日
島根県立平田高等学校
校長 野津孝明